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KOREAN BOOK CAFE ちぇっちゃり

─コリアンブックカフェ─

ブックレビュー「コリア系移住者の民族継承をめぐって-教育戦略と文化伝達-」

アンニョンハセヨ!
超久しぶりですが、ちぇっちゃりに置いています本について取り上げたいと思います!!

「コリア系移住者の民族継承をめぐって-教育戦略と文化伝達-」(安本博司著 2019年 ひつじ書房)
コリア系移住者の民族継承をめぐって-教育戦略と文化伝達-

本書は韓国人母と在日コリアン2世父の間に生まれた筆者によって
書かれました。
昔、筆者は母親や、母の母つまり祖母が話す韓国語を嫌い、母親は筆者に
韓国語を学ばせようとしなかった訳について、より深く知りたくなったことが
本書を執筆する直接的な動機になっています。

本書はタイトルにもある通り、日本に暮らすコリアン、ここでは
韓国人ニューカマー、中国朝鮮族、在日コリアンを対象に
インタビューとアンケート調査を通じて、次世代にいわゆる「民族教育」を行うにあたっての
コリアン属性の違いによる差異点と共通点を導き出そうとしています。

また、在日コリアン対象に行われたインタビューやアンケート調査には
当時活動していたちぇっちゃりの運営団体であるKEYの多くのメンバーも
協力しています。
インタビュー内容は匿名ですので、分からないようになっていますが
私が答えた内容も本書で取り上げられています。

本書を通じて、私は特に「遠慮」と「割り切り」ということに
ついて、強く印象を持ちました。

これは私のような在日コリアンの多くでも、日常的によくある
行動とも思いますが、本書では特に韓国人ニューカマーへの
調査の中で、この行動が取り上げられています。

「遠慮」とは次世代に民族的素養
(本書では母語や学校選択に焦点をあてている)
を継承するにあたり、本書に沿った言い方をすると
韓国人ニューカマーの妻が在日コリアンあるいは日本人夫に対し、
子の教育に対する自分の意向を夫に「遠慮」して伝えないことを指します。
その結果、子供が民族に触れる機会を抑制することにつながります。

まず、調査の範囲で共通していたことは、どの属性であれ、子に対する教育戦略は
夫の意向よりも、妻の意向が反映されていたことが言えます。
つまり、妻が「こうしたい」と言って、夫は「では、そうしたら」という感じであるものが
多く、夫は常に受動的で主体的な態度が見られないということです。

それでも、妻は夫とのコミュニケーションを大切にしようとする中
夫は否定していないにも関わらず、妻自身が外国人であると主張することで
夫に負担をかけるかもしれないという「遠慮」が働き
時には夫が妻の思いを知らないまま、「遠慮」によって
結果、子に民族教育の機会を与えないことになってしまっていることが調査の中で
浮き彫りになります。

一方で、日本人社会との差や日本人の無理解を実感し、それを気にして
自らの出自を隠したりすることなく、反対に「割り切る」ことで
出自を表明し、その姿勢をもって、子供への民族的素養を継承していくという
考え方を持つ事例も調査の中で明らかにされました。

差異を社会に可視化させることを親として子に示すことが、その親の
背中を見て子供が成長する可能性を作るというところに面白さを感じました。
また、このような現実を受け入れつつ(理解しつつ)、自らの主張も怠らないという
姿勢は多文化共生社会実現に向けた、実践ではないかとも思いました。

しかし、「割り切る」ことだけで、「日本人社会との差や日本人の無理解」という問題は
解決しません。問題の本質はどこにあるのか、
関係性において、その後につながる対話や接触により、関係したものそれぞれの
立場からの内省があってこその真の問題解決ということも忘れてはいけないと思います。

ここでは、韓国人ニューカマーの一例を取り上げたに過ぎませんが
本書ではほかにも様々な分析がなされています。

本書は全体を通じて韓国人ニューカマー、中国朝鮮族、在日コリアンと3つの属性によって
民族的素養、特に母語の位置づけが違うこと、そのことが次世代に継承するに
あたっての考え方にみられる違いとなること、また
日本人や日本社会、属性の違うコリアン同士の接触によって、
母語の位置づけや次世代継承の考え方
(これらは、自らの民族的アイデンティティとも言える。)
の変容について知れる内容になっています。

他人は自分を映す鏡と言いますが、私としては本書を通じて
KEYの社会的価値を改めて振り返る考える機会を得ることができました。
また、私は本書で言う在日コリアンですが、韓国人ニューカマー、
中国朝鮮族といった、自分とは異なる属性の人たちの、私とは
違った考え方や傾向を知る機会も得ることができました。
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